2007年01月19日

命日

去年の今日、愛すべき猫が死んだ。

正確を記するのならば、今日の午後二時五十八分、天に召された。

まあ、数えで17歳。大往生だろう。そして、最後は、僕と母の
腕の中で息を引き取ったわけであるし、これ以上無く、幸せな
猫生だった筈だ。

彼との出逢いは、実に自分が中学生の自分にまで遡らなければ
ならない。

当時、居住していたマンションの付近で、当てもなく彷徨い歩き、
鳴き続けていた猫がいた。

最後は動けなくなり、蹲っていたのを見かねた実妹が家へと
半泣きで連れ込んで来たんだった。

前述の通り、自分達家族が当時居住していたのはマンションだった。
建前は『ペット禁止』。しかし、実際にそこに済んでいる大家さんが
犬を飼っていたこともあり、暗黙の了解では「アリ」って雰囲気は
確かにあった。

しかし、我が光橋家は、ペットを飼ったことがなかった。

いや、正確に言えば、アメリカに滞在していた時にウサギを飼って
いたことはあったが(※当然、他界はしているだろうが、その最後を
見とってやれなかったことは心苦しい……言うまでもなく、父親の
任期が切れて日本に帰国することになったからだ。ちなみに、最後に
別れる時の、「鳴き声」を自分は一生忘れられない。ウサギって
鳴くんだ、ってことを初めて知った)、アグレッシブな猫や犬を
飼ったことはなかった光橋家なのであった。

しかし、妹の必死の訴えを無碍にもできず、母親はどうせなら、って
ことで部屋に入れることは許可した(かなり衰弱していたし、長くは
ないだろうと思ったらしい。どうせなら、暖かいところで……とまで
考えた程に)。

しかし、情が切れなかったのは、他ならない母だった。

結局、近場の動物病院に連れて行ったのだ。

獣医曰く
『これは、望み薄かと思いますが……念のため、強い注射を
一本打っておきましょう』

事実、獣医もそんなコメントをしていたそうな。

しかし、そんな一本の注射(今思うと栄養剤とか強心剤みたいな
もんだったのかな)が、彼の運命を変えた。

一晩が経ち、様子を見に行った母に対し、力を少しだけ取り戻した
彼の最初の行動は、そんな母に対し、威嚇することだった。

「シャーーーーーーーーー!!!!!」

母親は、絶望したらしい。

一体、どれだけの虐待を受けていれば、ここまで人間に対して
悪意を見せるのか、と。

それはそうだな。今際の際から戻って、まず威嚇するってのは
よっぽどだったんだろう。

ここからは、自分も覚えている範囲内で話せるな。
とにかく、そんな「凶暴な」彼を袋に詰めて、再度動物病院へ
母と行った。

獣医は驚いたし、看護士も驚いていた。

「凄い生命力!」と。

さておいて、その場で暴れる彼を抑えて点滴を実行。
ついでに、獣医による年齢チェックが始まったが、その獣医の
発言内容は僕と母を充分に驚かせるに足るものだったんだ。

「信じられませんが、この仔はまだ「おっぱい」を飲んでいる
年齢です。歯が生え揃っていませんし……本当だったら、体重は
今の三倍以上はある筈なんですが……」

そう。

彼は、片手の平に乗る程の大きさだった。

幾つかの条件が重なると、やはり彼が尋常でない虐待を
受けてきていたことは、僕でも推測できた。

ともあれ、そんな彼を引き取ることを家族会議で決め、
そして……「おっぱい」を飲んでいる彼に、与えなくては
ならないものは、やはり「おっぱい」。

なんたることか。

光橋祐希は、実の我が子を授かる前に、獣医から渡された
「猫用粉ミルク」をそんな彼に与えなくてはならなくなった
のである(実母の体調も当時は悪かったこともあり、とても
猫の面倒を一人に見せるわけにもいかなかった。そして、俺は
長男だったしな)。

獣医からの説明を受け、
「人肌、分量、タイミング」
に留意しながら、粉ミルクを解く。現金なことに、そんな
臭いに反応した彼は僕の足元でナーゴナーゴ鳴いているのである。

現金なこと、この上無しwwwwww

さておいて、特に温度に注意しながら合成した猫ミルク
(本当に俺は何をやっていたんだろうなww)を、スポイトで
吸い上げ、彼の口元に持っていく。

ゴロゴロと喉を鳴らしながら、吸い付いてチパチパとミルクを
嬉しそうに吸う彼。時折、スポイトを構えている手に爪が刺さって
大変に痛い思い&腫れを受けたりもしたが、どうやらこれは
仔猫特有の「乳揉み現象」だったらしい。そんな彼はしかし、
いざ満腹となると、「ケッ」っと言う具合で、その場を離脱する
のだった。そして、近寄れば「シャーーーーッ」と威嚇する。

全く。

「報われないことの代名詞だなあ」

とは、当時のミツハシ日記に直筆で書かれているフレーズであるwwww

まあ、そして月日は流れ……。

なんだかんだと威嚇をすることは無くなったものの
(まれにした、と言うのが事実である)、
やはり最後の最後までなかなか気を許すことの無かった
彼に、ミツハシが与えた名前は

『あるふぉんす』

当時、ブームであり、ミツハシ自身も大いに熱狂して
夢中になっていた『機動警察パトレイバー』から取らせて
いただいた(なんつうかミツハシの年齢がばれそうだが、まあ
良いわww)。

後になって、マフィアの親分で知られる
「アル・カポネ」と同じだったことを知ることになったが、
それはそれで彼に相応しい気もするwwww

いや、それ位に最後の最後まで、凶悪な猫だったんだ。

何しろ、「噛む」とか「引っ掻く」と行った猫特有の
アクションにおいて、彼は手加減を知らなかった。

それもその筈で、彼は仔猫時代を同世代、兄妹と過ごせなかった
からなんだろう、と言う推測も僕達には簡単に付いたよ。

しかし、痛かったなwwwwっww

コタツに足を迂闊に突っ込めば思いっきり噛み付かれる。

新聞を読んでいれば、突然その背後から爪を立てる。



なんか、こうして書いていると本当に禄でも無い猫だが。


それでも、愛していた。

今でも好きだ。
Al02.JPG


そんな彼の様子がおかしくなったのは、今から思えば一昨年の
夏からだった。


延々と寝るようになった。

それと比例して、摂取するご飯と水の量が激減した。


正直自分は、
「こりゃあ長くないなあ」

と思ったよ。

秋口になり、いよいよ顕著になった。

不安と寂しさを覚えた自分は、自室ではなく、彼の居場所でもある
和室に布団を敷いて、共に寝ることになった。

面白いんだ。彼、最初は「ふーん?」って空々しいんだよ。
だけれど、僕が布団に潜り込んで、読書などを始めて、うつらうつら
し始めると、

ぐりぐりっ

と、その頭で僕に意志を示す。

「とんだツンデレだな」
言いながら、布団を持ち上げると、彼は中にゆっくりと入り、
そして一回転して。

そして、僕の背中に自分の背中をピッタリと合わせて、寝るんだ。


お陰で、寝返り一つ打てやしない。
Al01.JPG

そんなこんなで、ミツハシ個人としては非常に睡眠不足な日々を
送る中、それでもやはり「あるふぉんす」は少しずつ、しかし確実に
老いていった。


全く、水も食料も取らなくなったのは、年明けからだった。

去年の今頃は本当に無茶苦茶で、実祖母が他界したのも師走の
29日、葬儀を含めたモロモロが元旦と言うとんでもない頃。

そして、そんなオババの後を追うようにして、あるふぉんすも
また、去年の今日、他界したんだった。

今でも忘れない。ほとんど動かなくなっていた彼が、突然

むくっ

って起きあがったんだ。続いて、軽い嘔吐。

そして、その場に崩れ落ちた。

「あるちゃん!」

母親が慌てて抱き締めたけれど、最後に二回、三回と痙攣して、
彼は少しだけ舌べろを伸ばした状態で死んだ。

本当になあ。最後の最後に、どこに行こうとしたんだろうか???

生物の本能なのかな???


ともあれ、そうして彼の猫にしては長い、けれど人間のそれに
比しては短すぎる生涯は終わった。

終わってみれば、半生を共にした猫だった。

そのことに気付いたのは、もっと後になってからで、
バイトに行っていた実妹が帰宅して、そんな「あるふぉんす」の
亡骸を目にしてあげた一言によって。

「うわああああああああああああああああああああん」

いや、あの叫びは言葉では変換できない。

慟哭、正に慟哭。


自分と妹の年齢差は大きいこともあり、顧みればそれは
僕の半生以上の存在だったと言うこと。


あるふぉんす、沢山をありがとう、としか言い様がない。

最後の最後に、究極的なモノを教わった。


俺がそっちに行くのがいつかはわからないけれど、
まあ行ったらよろしく。思う存分、噛んでもいいぞwwwww




後日談。


そんな彼を火葬したその日は、大雪だった。


最後の最後まで、迷惑を掛けるヤツだ。
snow.JPG

でも、これが最後かと思うと、ミツハシの涙は降り積もった雪を
解かし続けて、止まなかった。




まあ、一年経った。


あるふぉんす、本当にグッバイ。




……暗い話で申し訳も。

明日からは、また愉快で楽しく、そしてちょっと毒のある
コラムが始まるかと思います。

ここまで読んで下さった皆さん、何かの縁です。

そんな凶悪なあるふぉんすのために、祈ってやってくだちいwwww























































posted by 光橋祐希 at 21:18| Comment(2) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 全俺が泣いた……。
アルちゃんの肉球の安らかならんことを祈ります。

 僕も、昔飼っていたインコのピーちゃんを
思い出しましたよ。

 学校から帰ってきたら、宿木から下に落ちてて。
本当にテンパッたので、
羽切りしてなかったのに、そのまま掴んで
動物病院までダッシュしたんですけど、
結局その道中、手の中で逝ってしまいました。

 うう。今思い出しても泣けてくる。

 可愛がるほど、別れが辛くなるので、
ピーちゃんとの思い出は大切ですが、
きっともう、動物は飼わないだろうと思いますねー。

 なんかシンミリと私事を失礼しました!
Posted by 恒 at 2007年01月20日 18:31
>恒さん
 ペット・ロス、って言葉も今はあるみたい
 ですね……。
 そんなピーちゃんにもご冥福を。

 きっと、虹の橋で待っているお(´;ω;`)ブワッ.

【虹の橋】
http://www.geocities.jp/icke_jp/niji.html
 (音楽が流れるお)


 そうだなあ。

 僕にとっては、実の子供みたいなものだった
 からなあ、ショックも大きいですわ……。
 粉ミルク、真夜中に溶いていたからなwwww

 今、もう一匹がいるので救われていますが。

 何か、出逢いがあれば拒むことは無いと
 思いますよ。出会うべくして、出会うの。

Posted by みつはし at 2007年01月20日 21:35
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